ループ代数

数学において,ループ代数 (ループだいすう、英語: loop algebra) とは,ある種のリー環であり,特に理論物理学において興味を持たれる.

定義

g複素リー環とし,C(S1)円周多様体 S1 上の滑らかな(複素)関数の代数とする.このとき,gC(S1)テンソル積

g C ( S 1 ) {\displaystyle {\mathfrak {g}}\otimes C^{\infty }(S^{1})}

は,リーブラケットが

[ g 1 f 1 , g 2 f 2 ] = [ g 1 , g 2 ] f 1 f 2 {\displaystyle [g_{1}\otimes f_{1},g_{2}\otimes f_{2}]=[g_{1},g_{2}]\otimes f_{1}f_{2}}

で与えられる無限次元リー環である.ここで g1g2g の元で,f1f2C(S1) の元である.

これは S1 の各点に g を乗せた g の無限個のコピーの直積に対応するものではない,なぜならば滑らかさの制約があるからである.そうではなく,S1 から g への滑らかな関数,言い換えると,g 内の滑らかな径数付けられたループと考えることができる.これがループ代数の名前の由来である.

なお,部分代数

g C [ t , t 1 ] {\displaystyle {\mathfrak {g}}\otimes \mathbb {C} [t,t^{-1}]}

もループ代数と呼ばれる[1]

ループ群

同様に,S1 からリー群 G へのすべての滑らかな写像の集合は無限次元リー群をなし(その上の汎関数微分を定義できるという意味でリー群である),ループ群(英語版)と呼ばれる.ループ群のリー環は対応するループ代数である.

フーリエ変換

このループ代数上のフーリエ変換を, g t n {\displaystyle g\otimes t^{n}} g e i n σ {\displaystyle g\otimes e^{-in\sigma }} と定義することで取ることができる.ただし 0 ≤ σ < 2πS1 の座標である.

応用

g半単純リー環ならば,そのループ代数の非自明な中心拡大アフィンリー環を生じる.

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ Kac (1990)

参考文献

  • Fuchs, Jurgen (1992), Affine Lie Algebras and Quantum Groups, Cambridge University Press, ISBN 0-521-48412-X 
  • 表示
  • 編集