オースチナイト

Austinit
シュツルンツ分類 リン酸塩鉱物、ヒ酸塩鉱物、バナジン酸塩鉱物
Dana Classification 41.05.01.03
化学式 CaZn[OH|AsO4][1]
結晶系 直方晶系
対称 P 21 21 21[1]
単位格子 a=7.51, b=9.04, c=5.94[1]
へき開 {011}[2]
断口 不平坦
モース硬度 4〜4.5[2]
光沢 弱い金剛光沢、集合鉱物においては絹光沢
無色、黄白色、緑色、茶色
条痕 白色
透明度 透明または透光性
密度 実測: 4.13; 計算: 4.31[2]
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学
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オースチナイト: Austinite)は、シュツルンツ分類において「リン酸塩鉱物ヒ酸塩鉱物バナジン酸塩鉱物」に分類される鉱物である。組成式CaZn[OH|AsO4]カルシウム亜鉛と、ヒ酸水酸化物イオン複塩である。

オースチナイトは直方晶系結晶構造を持ち、様々な結晶形・集合形(ドイツ語版)をとる。層状から柱状結晶の他、外皮のある球果状、腎臓形、球状、繊維状集合鉱物として産する。また、しばしば左手系結晶面のものと右手系結晶面のものの異るキラリティー(エナンチオモルフ)を持つもの同士の双晶を形成する。

純粋なオースチナイトは無色で、格子欠陥と双晶形成の両方の原因から白色を示す。しかし、外来要素により黄白色、緑色、茶色を示すこともある。

オースチナイトはコニカルコ石と完全固溶体を成す。

語源と歴史

オースチナイトは1935年、アメリカ合衆国ユタ州トゥーイル郡のディープクリーク山地(英語版)中にある「ゴールドヒル(英語版)鉱山」においてロイド・W・ステイプルズにより初発見され、スタンフォード大学の鉱物学者、オースティン・フリント・ロジャース (1877–1957) に因み命名された。

分類

置き換えられつつあるが未だ普及しているシュツルンツ分類第8版(ドイツ語版)では、オースチナイトは「リン酸塩鉱物、ヒ酸塩鉱物、およびバナジン酸塩鉱物」に分類され、ここから「外来アニオンを含む無水リン酸塩」に細分化、さらにダフト石(ドイツ語版)、ガブリエルソナイト、ゴットロバイト(ドイツ語版)、コバルトオースチナイト、コニカルコ石、ニッケルオースチナイト、タンジェ石(ドイツ語版)と共にアデル石(ドイツ語版)を標準鉱石とするアデル石群を構成する。

2001年に国際鉱物学連合 (IMA) に採用されたシュツルンツ分類第9版(ドイツ語版)では「リン酸塩鉱物、ヒ酸塩鉱物、およびバナジン酸塩鉱物」に分類され、そこから「外来アニオンを含む無水リン酸塩等」に細分化される。この分類はさらにカチオンのサイズおよび、随伴アニオンとリン酸(またはバナジン酸、ヒ酸)イオンとの比率に基き、「中規模から最大のカチオンを含み、 (OH etc.):RO4 = 1:1 を満たす鉱物」に分類され、砒デクロワゾー石(ドイツ語版)を加えた分類番号 8.BH.35 の「アデル石群」を構成する。

ダナ分類(ドイツ語版)でもオースチナイトは「リン酸塩鉱物(など)」に分類され、「水酸基もしくはハロゲンを含む無水リン酸塩等」に細分化、さらに「水酸基もしくはハロゲンを含み組成式 (AB)2(XO4)Zq を持つ無水リン酸塩等」以下に、ここでもアデル石、コニカルコ石、オースチナイト、ベータダフト石、ガブリエルソナイト、タンジェ石、ニッケルオースチナイト、コバルトオースチナイト、砒デクロワゾー石で分類番号 41.05.01「アデル石族」を構成する。

結晶構造

オースチナイトは空間群 P 21 21 21 を持ち、格子定数 a = 7.51 Å; b = 9.04 Å, c = 5.93 Å,  の既約単位胞(ドイツ語版)あたり4式量を含む結晶を形成する[1]

変種

オースチナイト銅を含有する緑色の変種(ドイツ語版)は Barthite と呼ばれる[3]

形成と分布

アメリカ、ユタ州、「ゴールドヒル鉱山」産のオースチナイト(銀灰色光沢)とタルメス石(白)

オースチナイトは、金属鉱床のうち砒素が豊富かつ酸化帯(ドイツ語版)内に希少な二次鉱物として生じる。随伴鉱物(ドイツ語版)としては、とりわけアダマイト褐鉄鉱石英タルメス石(ドイツ語版)が挙げられる。

オースチナイトは希少鉱物であり、その産地は2016年現在までにおよそ90箇所しか知られていない[4]。基準産地である「ゴールドヒル鉱山」の他にも、ユタ州、ジューアブ郡、マンモス(英語版)に隣接する「ゴールドチェイン鉱山」でも見付かっている。

ドイツ国内の産地としては、なかでもバーデン=ヴュルテンベルク州ゲンゲンバッハ(ドイツ語版)に隣接する「ジルバーブリュンル」採掘場および、ライヒェンバッハ(ドイツ語版)近郊のヴァイラーに隣接する「ミヒャエル」採掘場、 ラーン川ラインラント=プファルツ州部分にあるバート・エムス近郊やザクセン州のエルツ山岳地帯にあるシュネーベルクに隣接するザンクト・ヴォルフギャング・ウント・マーセン(ドイツ語版)採掘場が知られている。

オーストリア国内では、ザルツブルク州、ヒュットヴィンクルタール(ホーエ・タウエルン山脈、ラウリザータール(ドイツ語版)に近接)の二つのボタ山でのみ見付かっている。

他の産地としては、南オーストラリア州ボリビアのラパス県、ブルガリアヴラツァ州チリアタカマ州中国内モンゴル自治区フランスブルターニュおよびラングドック=ルシヨンギリシャラブリオ地域、モロッコスース=マサ=ドラア地方メキシコチワワ州およびドゥランゴ州ナミビアツメブおよびグルートフォンテインポーランドキェルツェ山地(シフィエントクシスキエ山地(ドイツ語版))、ザンビアの中央州、スペインアンダルシア州およびカタルーニャ州ハンガリーボルショド・アバウーイ・ゼンプレーン県アメリカ合衆国アリゾナ州カリフォルニア州コロラド州ネバダ州ニュージャージー州ニューメキシコ州ユタ州ワシントン州が挙げられる[5]

出典

  1. ^ a b c d Hugo Strunz, Ernest H. Nickel (2001), Strunz Mineralogical Tables. Chemical-structural Mineral Classification System (ドイツ語) (9. ed.), Stuttgart: E. Schweizerbart’sche Verlagsbuchhandlung (Nägele u. Obermiller), p. 458, ISBN 3-510-65188-X
  2. ^ a b c Austinite, In: John W. Anthony, Richard A. Bideaux, Kenneth W. Bladh, Monte C. Nichols (Hrsg.): Handbook of Mineralogy, Mineralogical Society of America, 2001 (PDF 65,7 kB)
  3. ^ Stefan Weiß (2014), Das große Lapis Mineralienverzeichnis. Alle Mineralien von A – Z und ihre Eigenschaften (ドイツ語) (6. vollkommen neu bearbeitete und ergänzte ed.), München: Weise, ISBN 978-3-921656-80-8
  4. ^ Mindat – Anzahl der Fundorte für Austinit
  5. ^ Fundortliste für Austinit beim [ Mineralienatlas] und bei Mindat

文献

  • Lloyd W. Staples: Austinite, a new arsenate mineral, from Gold Hill, Utah. In: American Mineralogist Band 20 (1935), S. 112–119 (PDF 469,3 kB)
  • Friedrich Klockmann (1978) [1891], Paul Ramdohr, Hugo Strunz (ed.), Klockmanns Lehrbuch der Mineralogie (ドイツ語) (16. ed.), Stuttgart: Enke, p. 632, ISBN 3-432-82986-8

関連項目

外部リンク

  • Mineralienatlas:Austinit (Wiki)
  • RRUFF Database-of-Raman-spectroscopy – Austinite
  • American-Mineralogist-Crystal-Structure-Database – Austinite