オオイタビ

オオイタビ
オオイタビ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : 真正バラ類I eurosids I
: バラ目 Rosales
: クワ科 Moraceae
: イチジク連 Ficeae
: イチジク属 Ficus
: オオイタビ F. pumila
学名
Ficus pumila L. (1753)[1]
シノニム

オオイタビ(大木蓮子[3]・大崖石榴、学名Ficus pumila)は、クワ科イチジク属常緑つる性木本東アジア南部に分布し、日本では関東南部以西、特に海岸近くの暖地に自生し、栽培もされる。茎から出る気根で固着しながら木や岩に這い登る。オオイタビの名は、イタビカズラに似て大型であることによる。中国名は、薜荔[1]。台湾に生育する変種のアイギョクシFicus pumila var. awkeotsang)は果実を食用に用いる。幼苗は観葉植物として利用され、フィカス・プミラの名でも流通しており、園芸品種もある。

分布・生育地

日本の千葉県以西の太平洋側から南西諸島にかけて分布する[3]。人家の壁や石垣、ブロック塀、樹木を覆って茂る[3]

特徴

常緑のつる性木本[3]付着根でよじ登るつる性植物で、雌雄異株[4][3]互生し、全縁で長楕円形から卵形、葉先は尖らず、一般に成葉で長さ5 - 10センチメートル (cm) でイタビカズラ(葉先は尖る)よりも大きくなるが、幼葉では長さ2 cm、幅1 cm前後と小さく[4]、イタビカズラやヒメイタビ(枝葉に褐色の毛がある)と区別しにくい。家庭用の鉢植え栽培では成葉は生じないが、暖地の戸外では成葉が生じる[4]。茎や葉など、どこを傷つけても白い乳液が出てべとつく[3]

イチジク属の他種と同様、は壷状の隠頭花序(花嚢)の中に咲き、イチジクコバチ類によって授粉され、またその寄生により雄花序が果実様にふくれる。花嚢は、長さ5 cm前後の倒卵形で、花はその内側につくので花期でも外から見えない[3]。雄花序(雄花嚢)はいつまでもスポンジ状で食べられない[3]。雌株につく雌花序(雌花嚢)が受粉すると内部に多数の果実が形成され径3 - 5 cm、長さ6 cmほどの果嚢になり、9月末ごろ濃紫色に熟す[3]。果嚢が熟すと花序の壁が自然に破れて外に出、これは食用可能(アイギョクシではこれからペクチンを抽出して食用にする)[3]

  • 乾燥させ表裏をひっくり返したオオイタビの変種、アイギョクシの果実
    乾燥させ表裏をひっくり返したオオイタビの変種、アイギョクシの果実
  • オオイタビの葉
    オオイタビの葉
  • ヤシの木の幹を覆う
    ヤシの木の幹を覆う
  • 花序の断面
    花序の断面
  • オオイタビの果実
    オオイタビの果実

利用

寒さには強いほうで、自生地では塀などに這わせて、暖地の戸外壁面緑化に利用されている[5]。幼苗は観葉植物としても人気があり、学名からフィカス・プミラと呼ばれる[4]斑入り葉などの園芸品種がある。本州中部では露地栽培可能で壁面緑化に用いられるが、気根が基材を傷めることもある。

園芸品種

  • ‘バリエガータ’(Ficus pumila ‘Variegata’) - 葉に黄緑色から白色の小さい斑が不規則に入る園芸品種[4]
  • ‘サニー’(Ficus pumila ‘Sunny’) - 白色斑入り葉の園芸品種[4]
  • 観葉植物としての「プミラ」
    観葉植物としての「プミラ」
  • サンセベリアと寄せ植えされている「プミラ」
    サンセベリアと寄せ植えされている「プミラ」
  • フィカス・プミラ ‘バリエガータ’
    フィカス・プミラ ‘バリエガータ’

栽培

観葉植物で栽培される幼苗は、明るい日陰を好む性質があり、強い光に当たると葉が痛むことから半日陰で管理される[6]。春から秋は水やりをたくさん行い、冬場は水切れしない程度に水やりを控える[6]。施肥は、春から秋に液肥を2か月おき程度に与える[6]

食用

完熟した果嚢を摘み取って、スプーンなどですくって生食したり、ジャムなどに加工して食べる[3]

近縁種・近似種

近縁のイヌビワ(学名: Ficus erecta var. erecta)は、小型であるがオオイタビと同じような形態をしている[3]。近似種のイタビカズラ(学名: Ficus sarmentosa subsp. nipponica)やヒメイタビ(学名: Ficus thunbergii)は、花嚢の直径が15 mmと小さい[3]

脚注

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ficus pumila L. オオイタビ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月17日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ficus pumila L. var. lutchuensis Koidz. オオイタビ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月17日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 川原勝征 2015, p. 84.
  4. ^ a b c d e f 土橋豊 1992, p. 113.
  5. ^ 土橋豊 1992, p. 114.
  6. ^ a b c 渡辺均監修 池田書店編 2006, p. 129.

参考文献

  • 川原勝征『食べる野草と薬草』南方新社、2015年11月10日、84頁。ISBN 978-4-86124-327-1。 
  • 土橋豊『観葉植物1000』八坂書房、1992年9月10日、112-114頁。ISBN 4-89694-611-1。 
  • 渡辺均監修 池田書店編『インテリアグリーンを楽しむ はじめての観葉植物 育て方と手入れのコツ』池田書店、2006年11月28日。ISBN 978-4-262-13618-9。 

外部リンク

  • ウィキメディア・コモンズには、Ficus pumila (カテゴリ)に関するメディアがあります。
  • ウィキスピーシーズには、オオイタビに関する情報があります。
分類群識別子
  • ウィキデータ: Q2360517
  • ウィキスピーシーズ: Ficus pumila
  • 臺灣物種名錄: 204855
  • AoFP: 1937
  • APA: 2678
  • APDB: 24217
  • APNI: 92504
  • BOLD: 431123
  • Calflora: 12513
  • CoL: 6HY8T
  • EoL: 489706
  • EPPO: FIUPU
  • FNA: 233500650
  • FoAO2: Ficus pumila
  • FoC: 233500650
  • GBIF: 5361930
  • GRIN: 16951
  • iNaturalist: 162972
  • IPNI: 853513-1
  • IRMNG: 10204527
  • ISC: 24162
  • ITIS: 502618
  • MoBotPF: 282751
  • NBN: NBNSYS0000042109
  • NCBI: 66386
  • NSWFlora: Ficus~pumila
  • NZOR: 4fa5d2f5-30aa-4c92-8169-6509a17819b3
  • NZPCN: 3946
  • PFI: 8480
  • Plant List: kew-2811930
  • PLANTS: FIPU2
  • POWO: urn:lsid:ipni.org:names:853513-1
  • RHS: 7210
  • Tropicos: 21301146
  • WFO: wfo-0000689922